経営者の想い

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(右)
ヤマサハウス株式会社
会長 佐々木 典明
(左)
ヤマサハウス株式会社
代表取締役 森 勇清




▼創業の背景と想い

大工不足に関しては、随分前から深刻な課題として捉えていました。特にプレカットが導入されたことで若い大工の育成にブレーキをかけてしまった側面があると感じています。

ヤマサハウスグループでは、30年ぐらい前からプレカットを導入したのですが、それまでは、大工さんは雨が降る日は次の現場の切り込みをしたり、作業場で出来る仕事も行っていました。

プレカットが出てきた結果、大工さんの仕事は現場でしかできない仕事のみとなり、「基礎ができないと、建て方ができない」など、天候や仕事の状況によって、手隙になるタイミングが増えてきました。そうして、段々と職人さんが減っていきました。




プレカットが出てきたことで、職人不足を解消したり、品質の安定化に繋がった面もありますが、結果的に職人目線で見ると、後継を育成する意欲や仕事を奪ってしまった一面もあります。


そうしたことを背景に、以前は、新しく大工を採用する棟梁に対して、補助金を出すような仕組みを数年ほど行っていましたが、根本的な解決にはなりません。
 
現在ヤマサハウスに関わってくださる大工さんの年齢分布を観察すると、圧倒的に50代後半が多い状況です。今の状態では10年後、非常に苦しい状態になることが予想されました。
 
自社で育成に力を入れないと、いよいよ難しい状態になってきたということで絆工房ヤマサを立ち上げました。
 
2015年ぐらいから構想が出て、2017年に会社を立ち上げ、採用を開始。2018年に一期生が入社しました。

構想段階では、お金の問題で議論することも少なくありませんでした。回収の見込みが、必ずしもあるわけでなかったので。育成にかかる費用だけでなく、指導に必要な資材コストなどもかさんできます。とはいえ、会社や業界にとっては必要な取り組みなので、腹を括って、10年ぐらいは赤字を覚悟しています。


大工仕事は、始めたタイミングが早い人ほど、ひとり立ちも早い。絆工房ヤマサは、なるべく早い段階で採用できるように考えた仕組みでもあります。
 
例えば、電動工具を使うような仕事は、ある程度の年齢からでも可能です。しかし和室などの、細かい部分は若いうちから覚えないと大変です。複雑な作業で、「面倒くさい」と感じる部分も多いと思います。今の棟梁の中でも、大工仕事を始めた時の年齢で差が出る部分もあるような気がします。
 
若い時に基礎的な技術をしっかり身につけてもらうこと。それは絆工房ヤマサにとっても、非常に重要です。

社員大工育成といっても、棟梁に任せっぱなしのパターンも多いが、絆工房の場合は、座学などのプログラムを用意したり、専任のサポートスタッフも配置し、時には会長や社長・役員が育成中の社員大工と対話することもあります。

そういう意味でも、贅沢にお金をかけている仕組みではあります。また棟梁から学ぶだけでなく、外部に研修に行かせることもあります。様々な技術を身につける中で、本人達にも自覚と責任感が生まれることを期待しています。




▼未来ビジョン
 
一期生の中には、父親と同じように新築ではなく、リフォーム分野で働きたいという人もいます。今後は新築だけでない依頼も増えてくるでしょう。そんな時でも基礎的な学びができていれば、なんでも対応できます。時代の流れが変わっても、本質的に必要な能力は変わらないと思います。
 
50組の棟梁がいると、その分だけ仕事の仕方があり、現場監督はその棟梁に合わせて仕事をします。さらには協力業者である電気、水道屋さんも、それぞれに棟梁に合わせながら仕事をしています。そうすると、生産性が上がりきらない。
 
そういった面が社員大工育成の中で、高いレベルで均質化されていくと、家づくりに関わるそれぞれが、今よりも仕事がしやすくなる。
 
職人さんに左右され過ぎない仕事や、適切な賃金制度を作っていくことも大切です。
 
仕事の早さに価値を置きすぎると、丁寧さが欠けることもある。そういった品質と収入とのバランスがとっていけるような、仕組みも作っていけたらと考えています。
 
今後、絆工房とヤマサハウスとのコラボができたら、もっと面白いことができてくるような気がします。お互いの仕事内容に対してもっとを理解していくことで、会社として手掛けられる仕事の幅も広がるはずです。
 
社員大工の育成は、ものづくりの基本なのかもしれません。基本が無くして、次へはいけません。基本とは何か?を常に問い続け、思わぬことに、弾力的に対応していくことが大事だと考えています。
 
こういったことを踏まえて、絆工房に入りたい、一緒に取り組みたいと感じてくれる若い人が増えてくれると嬉しいです。